糖質制限が適応外となる場合の考察③ -長鎖脂肪酸代謝異常症-




おはようございます。リンさんです。

TOKIOの山口達也さんの記者会見を見て何となく思いました。

酒に溺れるのは良くないわけです。「今は」酒を飲まない、という会見の言葉に心の弱さが現れたとして糾弾する記事もありますが、酒に溺れている依存状態とは通常の状態とは異なります。

どう考えても酒のせいで彼はこうなったわけですが、酒のせいに出来なくなるほど判断が出来なくなる。これが依存の恐ろしい所です。この状態から抜け出す事は非常に難しくなるので、そうなる前に依存物質である酒とある程度の距離を保つ事が重要になります。

山口達也さんが立ち直るのかどうかは依存を乗り切れるかどうかにかかってきています。その戦いは孤独で絶望的な個人の戦いにならざるを得ません。それは彼自身で乗り切らなければならない話です。

しかし彼のこの行為によって酒と依存というものに意識を傾けるヒトが増える事になれば、依存になる前に酒との距離を考え直すよい機会になるかもしれません。残酷な言い方ですが、彼は社会的地位と引換えに教訓を残したわけです。

長鎖脂肪酸代謝異常症という難病

無駄に健康体だったが為に健康に無頓着だった若い頃も、糖質制限を始めた時もその健康への過信っぷりで糖質制限適応外の症例に関して真面目に学ぶ事が無かったわけです。

膵炎の診断基準肝硬変の症例に関して考察してきた糖質制限適応外シリーズ第3弾は長鎖脂肪酸代謝異常症です。難病指定されており、日本では年間10~50人ほどが発症しているそうです。

まずは長鎖脂肪酸とは何ぞやというところからいきましょう。

長鎖脂肪酸とはその名の通り脂肪酸が沢山くっついた状態のものを指します。炭素が鎖状に繋がっている脂肪酸の集合体なので長鎖脂肪酸と呼ばれます。いわゆる体脂肪などはこの長鎖脂肪酸の形で格納されています。

長鎖があれば中鎖と短鎖も存在しています。全て飽和脂肪酸の分類で、炭素の鎖で繋がっている数に違いがあります。

中鎖脂肪酸はココナッツオイルが有名ですね。中鎖脂肪酸はエネルギーになるのが非常に早い脂肪酸です。摂取後3時間程度で使い切られる体脂肪になりにくいと言われている油です。中鎖脂肪酸を豊富に含む油を摂取してケトン体を爆発的に上昇させて健康になろうという手法もあります。

短鎖脂肪酸はバターなどに含まれる最も鎖の短い脂肪酸です。これは人体のエネルギーにはあまりならず腸内細菌のエネルギーになります。腸内細菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を産生し、それを自身のエネルギーにしています。

食物繊維にカロリーがあるのは不思議な気がしますが、この 食物繊維 → 短鎖脂肪酸 の変換過程でカロリーがある脂質に変わるからであり、そのエネルギーは腸内細菌のエネルギーとして使われてしまうので人体に吸収されません。

最後に代謝異常症とはその名の示すとおり人体の代謝に異常が起こっている状態の事です。つまり長鎖脂肪酸代謝異常症とは体脂肪などの長鎖脂肪酸を代謝する機能に異常が起こっている状態の事を言います。

長鎖脂肪酸代謝異常症の症状

長鎖脂肪酸代謝異常症は飢餓・空腹状態に突然発症する可能性があります。発症すると体脂肪を利用したエネルギーシステムを機能させる事が出来なくなる事から、糖質制限を行う事が出来ない病態と言えます。

難病指定されているほどに年間発症者が非常に少ない事から原因の特定に至っていませんが、長鎖脂肪酸の輸送システムに問題が起きている事、カルニチンの利用効率に問題がある事などが原因の1つであると考えられています。

長鎖脂肪酸代謝異常症の症状として有名なものは以下の通りです。

  • 低ケトン性低血糖

通常、糖質を控えると脂肪をメインエネルギーに切り替えて運用が始まります。そうなると血糖値が低血糖を示す値であってもケトン体が上昇しているのでエネルギー運用に関する問題が無くなります。

ケトン体はインスリンの基礎分泌が確保されている限り、ケトアシドーシスに至る事はありません。糖質制限下でのケトン体代謝状態はケトーシスと呼ばれています。ケトーシスはインスリン基礎分泌が保たれている状態で発動する体脂肪を分解してエネルギーにしている状態です。

長鎖脂肪酸代謝異常症では体脂肪をエネルギーに変換する回路に不具合が発生していますから、糖質を控えた状態で体脂肪が上手く運用できなくなります。

その結果、糖新生が追いつかずに低血糖となります。低血糖でもケトーシスなら全く問題ないですが、ケトーシスになれないので低血糖の重篤な症状に見舞われてしまうわけです。

  • 筋力低下

長鎖脂肪酸代謝異常症は糖質と脂質によるエネルギー産生において脂質の運用が出来ません。つまり糖質をメインエネルギーにするしかないわけですが、ビタミンとミネラルが身体に満ちている状態で無いと糖質は人体のエネルギー通貨であるATPを多く作る事ができません。

ビタミンとミネラルが枯渇している状態でグルコース(糖質)1分子でATP2個、ビタミンとミネラルが満ちている状態でグルコース1分子でATP36個を作る事が出来ます。余談ですがビタミンとミネラルが満ちている状態でなら脂質(パルミチン酸という長鎖脂肪酸)は1分子でATP129個程度作られます。

長鎖脂肪酸代謝異常症で主食を中心の糖質摂取を行っている場合、体内のビタミンやミネラルが枯渇する為にATPは2個しか作られていないと想像できます。そうなると慢性的なエネルギー不足に陥るために身体は体脂肪を燃やしてエネルギーを作ります。

しかし長鎖脂肪酸代謝異常症では脂肪酸が利用できません。従ってたんぱく質で構成される筋肉を分解してエネルギーにする機能が強く働きます。これによって筋力低下が起こります。

  • 高アンモニア血症

高アンモニア血症とは、血液中のアンモニアが高い値を示す状態の事です。尿素を尿として排出できなくなるためにアンモニアが体内に残留するわけです。

このアンモニアを排出する機能を維持する為にミトコンドリアが重要になってきます。しかし長鎖脂肪酸代謝異常症ではミトコンドリアを稼動させて体脂肪を分解する事が出来ません。

ミトコンドリアは使われていないと数を減らしてしまいます。ミトコンドリアを機能させる為のカルニチンの利用効率も悪い為、更に悪化の一途を辿ります。

まとめます

長鎖脂肪酸代謝異常症は難病指定された病態です。体脂肪がエネルギーとして利用できなくなるので糖質制限が適応外となります。

代謝疾患ですが原因の特定が出来ていない為、リスクを回避する術がありません。こればっかりは糖質制限推奨の医師の判断を仰いで下さい。それをしないのであれば糖質制限をするかしないかは自己責任のみになります。

最後まで読んでいただき、いつもありがとうございます。










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